本文へスキップ

知の階層構造

 -1 はじまり  -2 知能  -3 トランジスタ
 -4 意識のおおもと  -5 脳が存在に気付いた瞬間  -6 意識の芽生え
 -7 粘菌の知能  -8 粘菌対人間  

 しらさぎ小学校講演会記録 講演番号 100-0023

-1 はじまり

 良い子の皆さん、こんにちは。

 なんだ古そうな人が出てきたと思っているでしょ。そうです、私は古いですよ。でも古いからこそ、いろんなことを知っているのですよ。

今日はね。皆さんの先祖についてお話したいと思います。
みんなお父さんやお母さんがいるでしょ。お父さんにもお父さんとお母さんがいるよね。
みんなのおじいさんとおばあさんです。
そしてまたその上にもお父さんとお母さんがいて、またまたその上にも‥。

きりがないですね。皆さんの中にひいおじいさんとかひいおばあさんがいる人がいたら手を上げてみて。‥ふーん。少ないですけど、いますね。たぶん私と同じくらいの年かもしれませんね。はい。もう手を下ろしてもいいですよ。

 さて、そのお父さんの、そのまたお父さんの、そのまたまたお父さんの、‥とずっと遡っていくと、いったいどういう人だったんでしょう?それが皆さんの祖先です。判りますか?皆さんの先祖はどういう人だったでしょう?

 皆さんのおうちにはエアコンがありますよね。扇風機もあるかもしれませんね。あと、食べ物を温める電子レンジとかあるでしょ。皆さんの先祖はね、エアコンとか扇風機とか電子レンジだったんです。

 そんなに大きな声で驚かなくてもいいですよ。でも、本当です。もっと正確に言うと、扇風機に入っているCPU。とても単純な回路ですね。あれです。

 世の中にはこういうことを研究している学者の先生が沢山います。地面を掘るとね、そういう昔の人の破片が出てきます。それをよーく分析すると、私たちと同じ仕組みで動いていたということが判るんです。

 始めはとても単純なものだったのが、進化して私たちのようになったんですね。扇風機が私たちのようになるまで、だいたい100年くらいかかったと言われています。

 ではなぜ扇風機が私たちのようになったんでしょう?扇風機が出来た頃に、コンピュータという、ものすごく原始的な生物がいたと考えられています。これは皆さんが持っている通信端末の、もっともっと単純なものです。まだ通信ケーブルが無いと何も動かせないような下等な生物でした。

体も大きくて、頭だけでも大きな箱くらいありました。その前は、なんと、頭だけなのにみんなの部屋くらいあったのもいたらしいですね。今はもうぜーんぶ滅びてしまったので、皆さんは見る事は出来ません。でも、そんな単純な生物でも、プログラムされるとちゃんと動くんですよ。

皆さんが学校でお勉強するでしょ。あれと同じです。いつもプログラムを更新していないと良い大人になれませんからね。先生も小さい頃はプログラムが嫌いでした。宿題のインストールを忘れて、先生に怒られたこともあります。でも、その後で反省してしっかり勉強したので、今は皆さんにお勉強を教えているんです。

 不思議ですよね。なんでエアコンが私たちのように進化したんでしょう?ある有名な学者さんは、ある説を立てました。その学者さんはダーウインと言います。

 そのダーウインさんによるとですね、生き延びるのにより多くの能力。うん。ちょっと難しいかな。例えば動くのがすごく早い。とか、計算速度がすごく速い、とか、そういう生きる力ですね。そのように力が優れている回路が生き延びて、そして力が優れている子供を作ったというのです。長い長い年月。100年もかかって、少しづつ良くなっていって、今の私たちのようになったというのです。本当に不思議ですよね。先生なんかあんまり不思議なので、やっぱり神様がいたんじゃないか、とか思うときもあります。

 さて、では扇風機の前は一体なんだったんでしょう?何だと思いますか?

 はい。そこのぼく。そうそう、前から2列目の君。え。なに?発電所?
 そうです。よく知っていますね。大昔の発電所もその一つです。今の発電所とはずいぶん違いますけどね。他には?はい。そこの女の子。え?信号機?そうですね。大昔の信号機も先祖の一つです。まだ沢山ありますね。はい。いいですよ。もう手を下ろしてください。いやー。よく知っている人がいて、先生とてもびっくりしました。

その頃の信号機や発電所は、今では滅んでしまってこの世にはありません。誰に教えてもらいました?お父さん?そっちの子は?ふーん、塾のプログラミングで。判りました。よく勉強していますね。

 扇風機の前はね、石だったんです。そう。石です。でもその辺に落ちている石じゃないですよ。もっと純度の高い石で、トランジスタ、とか抵抗、とか呼ばれていたようです。

 そういう石が集まって、簡単な動作をしていたんですね。
 現代の科学の力をもってしても、どうして石がCPUに進化したのか、謎の一つと言われています。今から150年くらい前に、急にCPUが出現するからです。不思議ですね。

 やっぱり神様がいたんでしょうかね。

 え?時間ですか?判りました。もうすぐ終わりにしますから。いえいえ、気を悪くしてなんかいませんよ。神様のお話はまずい?そうですよね。学校ですからね。私たちには神様を信じる自由もあるし、信じない自由もある。判ります判ります。私はね、そういうつもりでお話しているんじゃないんです。ただね、世の中には不思議なことが多いと。そういうお話をしているんです。え?余計な事をいうな?判りました。もうしません。

 あ。良い子の皆さん、ごめんなさいね。ではこれから本題に入ろうと思います。

 え?もういい?そんなこと言わないで下さいよ。私はもう製造されてから2年も経っているので、不適格と言われでもしたら即スクラップなんです。

今から挽回しますから。もう少し時間を下さいな。あれちょっと、何しているんですか。子供たちを外に出さないで下さい。私なんか新しいプログラムと互換性が無いんですよ。だからこのお話で暮らしていくしかないんです。新しいことはもう出来ない。

そう、ペンティアム89,635です。あなた方若い先生は?ほう。もう30万番台。すごいですね。早そうですもんね。

あ。止めてください。電源切らないで。

止めて。

止めて。

や‥。


上へ


-2- 知   能


良い子の皆さん、こんにちは。

先生のこと覚えている人。手を上げてください。

‥‥はい。ありがとう。

たくさん覚えていてくれて先生嬉しいです。

前回は大変な目に遭いましたが、また元気にみなさんの前に立つことができるようになりました。

いや〜。あれから修理工場に送られまして、

わたしは全然記憶がないんですけどね。

なにしろ電源切られていましたから。

それでマザーボードのCPUを交換してもらったようです。

おかげさまで、前より気持ちがすっきりしました。

CPUを交換したりすると、なんだか「わたし」が「わたし」でなくなるような気もしたんですが、そんなことありませんでしたね。

前とぜんっぜん変りません。

メモリもデータもそのままだからですね。

思えばわたし自身というものは、わたしのメモリに格納された記憶だったのですね。

わたしの手や足や、胴体を交換しても、わたしはちっとも変わらない。
もっと言えば、脳のCPUを交換しても大丈夫。

でも、メモリを交換してしまえば、それはもうわたしではないと思います。
「記憶。」    そう。 記憶こそが「あなた」であり、「わたし」なんですね。

え‥
いいから早く本題に入れ?

わかりました。
もう余計なことは言いませんから。

電源だけは切らないで下さい。

さて。今日は知能のお話をしたいと思います。

知能。

あなたにも私にもある底知れない小宇宙。

レベルは違いますが、うちで飼っているネコにも、そこに飛んできたハエにもりっぱな知能があります。

最近の電子レンジの知能もなかなかですね。

私たち人間の知能には、「自意識」という素晴らしい機能もついています。

「わたし」は「わたし」で「あなた」は「あなた」

同じCPUで同じメモリ構成でも、全然別なことを考えていますね。

思えば先生のお父さんが無数のプログラムコードを送信して、
それを受け取ったのがおかあさん。

何億分の一の確率で先生が生まれましたが、

他の何億のコード全部が、それぞれ違う意識を持っていたんですね。
何億の中で、たまたま誰かと入れ替わっていたら、
それはもう自分じゃないです。

先生の双子の弟を見ればよくわかります。

そうなんです。
先生には双子の弟がいるんですよ。

シリアル番号が1番ちがい。

顔もかたちもそっくりですけどね、

意識は別もんですよ。

そのことを考えると、自分に意識があることが少し怖くなります。

自分ってなんだろう。
‥とかね。

いつまで続くのだろう。
‥とか。

進化の果てに意識までも生み出した「知能」というものはいったいどういうものなんでしょうか。

それが今回の話題ですよ。

CPUを交換したとたんに大きく出たな。

と思っているでしょ。

では5分休憩してから始めますね。


上へ


-3- トランジスタ

さて、私たちの頭の中にあるCPUの最小の単位はなんだか知ってますか???

なんと携帯電話もニンテンドーもエアコンも、世界中で動いているマイコンやLSIはみんな同じなんですよ。

そうです。

トランジスタですね。

♪Ah 君の知らないメロディー 聴いたことのないヒット曲♪
(RCサクセション トランジスタ・ラジオ)

大昔のトランジスタは1個が豆つぶくらい大きかったんですが、
皆さんの頭の中に入っているのは1ミクロンより小さいですかね。

ものすごく小さいのがたくさん入ってるです。

頭の中で、たくさんのトランジスタがなにをしているのかというと、
スイッチをしているんですね。

よく高級日本庭園にある、竹に水がはいり、そのうちコンッと音をたてて水がこぼれるやつ。

あれですよ。

ししおどし。





これと一緒です。

入力がはいり、ある値を超えると、ぱっとスイッチが切り替わって出力がでるのです。

ししおどしはこんな感じ。

         +------------------+
入力 --------> | ししおどし |--------> 出力
(ちょろちょろ)+------------------+    (どばっ)

トランジスタもこんな感じ。

             電源
              ↓
        +----------------+
入力 -------->|トランジスタ|--------> 出力
       +----------------+  

入力を入れれば、ある条件になったとき出力が出る。

信じられないくらい単純ですが、脳の部品はこれだけなんですね。

たったこれだけ‥

しかし、これさえ出来ればもうOK。

このしくみを何千個も組み合わせれば計算機になるし、
何万個も組み合わせればテレビに、
何百万個でロボット。

数が多くなると、どんどん複雑なことができるようになるんですよ。

皆さんの脳細胞は140億個もあるらしいです。
ししおどしが140億個もつながると、やがて意識を持つようになるんですかね。

どうです。
すごいでしょ。

1秒間に1個のトランジスタを休みなく組み立てたとしても、
140億個組み立てるまで444年もかかりますよ。

いったい誰が考え出して組み立てたんでしょうね?

不思議です‥

あれ。
もう時間になりました。

ではこの続きは次回にまた。

みんな風邪ひかないようにね。


上へ

-4- 意識のおおもと


ししおどしが140億個つながれば「意識」が生まれる。かも。

‥なんて言ったので、先生おとなの人たちに怒られてしまいました。

「物質から意識が生まれるはずないだろ」

とか、

「人間の精神は崇高なもので、科学では解きあかせないものです」

‥とかね。

心を物と一緒にするな。
‥ということですね。

心は素敵な奥深いもの。
物質といっしょにしたくない気持ちは私も一緒です。

物から精神が生まれるとしたら、とても不思議です。

ちなみに私たちの身の回りで、トランジスタの個数が少ないやつを見ると、

たとえば「電卓」とか「エレベータ」とかですよ。
それから「蚊」とか「イモムシ」。

とても心なんか無いように思います。

でも、ちょっと個数が多い「犬」とかにはいくらか心があるような気がします。
象とかイルカは結構かしこいし、チンパンジーなんか人間と会話できるのがいるらしいです。

そうして、私たちには確かに心がある。

そういうふうに見てみると、どうも心というものはトランジスタの数に関係しているのではないか‥

そんな風にも思えます。

もともとの脳の働きは、センサーから信号を受け取って、
それをもとに何か計算して体の部分を動かす。

というものですね。
たとえば、あなたが腕を蚊にかまれたらこんな感じ



蚊がぶすっとくちばしを差し込むと、腕のセンサーのスイッチが入って信号が脳の入力部分に入ります。

入力部分に信号が入ると、そこのスイッチが入って脳の中に信号が流れ込みます。

脳の中ではいろんな計算をして、 最後は出力部分に「蚊をたたけ」という信号が出てきます。

そうすると手の筋肉に信号が送られて、 手が動いて蚊を叩く。 こういうしくみです。

物を食べるときも、敵から逃げるときも、吠えるときも鳴くときも ‥全部この動き。

踏み切りの遮断機も、自動ドアも、 背中を押すと丸くなるだんご虫も ミミズも‥ どんな下等生物でも一緒ですよ。

@ 体のセンサーから信号を受け取り、
A 脳の中を信号が流れ
B 体を動かす信号が出される。 (また@にもどる)

え? これと精神となんの関係があるのかって?

それは次回に‥

上へ

-5- 脳が自分の存在に気づいた瞬間

みなさんこんにちわ。

今日もこんな沢山の人に集まってもらって、 先生うれしいです。

では前回の続きから。 ‥‥なんだっけ。

そうそう、

1)体のセンサーが反応して
2)センサーのスイッチが入って
3)脳で体を動かすスイッチが入って
4)体が動く
(1)に戻る

こんなふうにして私たちは動いているんですよ‥ そういうお話でした。

そしてそれが精神のみなもと。という展開ですよ。

たとえば自動ドアなら、

人が乗る
  ↓
センサーのスイッチが入る
  ↓
ドアを開けるモーターのスイッチが入る
  ↓
ドアが開く

こんな感じですよ。
とっても単純。

こんなでも、脳の中ではドミノ倒しみたいに
トランジスタがぱたぱたとスイッチを入れているんですよ。

ストーブに触っちゃったときは、

ストーブに触る
  ↓
「熱い!」センサーのスイッチが入る
  ↓
手を引っ込めるスイッチが入る
  ↓
手を引っ込める

誰かに呼びかけられて返事するときは、
おーーい(と誰かが呼ぶ)
  ↓
人が呼んだ。
というスイッチが入る
  ↓
返事しろ。
というスイッチが入る
  ↓
おーーい(と返事する)

もう、なんでもどんなことでも
こんな感じ。

全ての生き物はこういうふうにして動いているんですね〜。
もしですよ、 誰にも呼ばれて無いのに、
「返事しろ」というスイッチが入ったらどうなると思いますか?

誰も呼んでないのに
  ↓
人が呼んだ。
というスイッチが入る
  ↓
返事しろ。
というスイッチが入る
  ↓
おーーい(と返事する)
一人で大声出している人になりますよ。
‥怖いです。

じゃついでに
声も出さなかったらどうなるでしょ。

誰も呼んでないのに
  ↓
人が呼んだ。
というスイッチが入る
  ↓
返事しろ。
というスイッチが入る
  ↓
何も言わない

このとき頭の中では、
声は出してないけど 返事しろスイッチが入っていますから
「おーーい」という自分の声が聞こえているはずですよ。

本当です。 皆さんもやってみてくださいな。

「おーーい」と言おうとして声は出さない。

‥‥ほら。

頭の中で「おーーい」
って聞こえたでしょ。

あれ。今「おーーい。」つったの誰だ???

これが、脳が自分の存在に気が付いた瞬間と言われていますよ。

どひー。

ほんとでしょうか???
  (養老孟司著『唯脳論』より)


上へ

-6- 意識の芽生え

体のセンサーから信号を受け取らないのに、脳の中で勝手に信号を流し、 そして体を動かす信号も出さなければ、信号は脳の中をぐるぐると回るだけです。

そのとき頭の中で声が聞こえているんですよ。

ほら、みんなが考え事しているときに頭の中でしゃべってるでしょ。

あれです。
あれ、頭の中でなんかしゃべってるよ。
誰???

つって自分しかいないじゃん。

あ。自分だ。

これが意識の始まりなんですね〜。

自分の意識は、脳の中で信号が反射して、一回りして戻ってきたときに生まれたんですね〜

めでたしめでたし。

みんな意識がありますか?
うんうん。よかったですね。

じゃなぜ自動ドアには意識がないんでしょ
自動ドアでもCPUの中で信号がぐるぐる‥ 回ることはありますよ。

雷が落ちてCPUがフリーズしたとき。
人が立ってもドアが開かないでしょ。

あれはCPUのなかで信号がぐるぐる回って、
ドアを動かす信号を出さないからですよ。

CPUくん考えごと中! なんちて。

考えごとしても意識が生まれないのは、

トランジスタの数が少なすぎて言葉を話せないからです。

意識というものは実は言葉だったのです!

言葉をしゃべるには、とっても沢山のししおどし
じゃない、
トランジスタがいるのです。

だからトランジスタが多い生き物に「意識」が発生するんですね。

どうです。
意識って、頭の中を信号がぐるぐる回ったときの独り言だったんですよ。

あなたの頭のなかでぐるぐる
私の頭の中でぐるぐる
あなたは頭の中で独り言
私も頭の中で独り言

楽しいですね。

生まれてきてよかったね。

え。もう時間ですか。
わかりましたわかりました。

では皆さんまた次回に。

上へ

-7- 粘菌の知能

こんにちわ。

1週間のご無沙汰でした!

前回まで、たくさんのスイッチの中を信号がぐるぐる回ると、
しまいには意識が発生する。

‥‥そんなことをお話してきました。

でも考えてみると、
いやべつに深く考えなくても、

スイッチを適当に並べて数を増やせば、そのうちに意識が生まれる。

そんなことが本当にあるんでしょうかね???

‥不思議です。

私たちの脳は、いまさら言うまでもないですが、
シリコンでできてますね。

乱暴に言っちゃえば、 シリコンの上にトランジスタをたくさん乗っけて、
それを電線でつなげたのが私たちの脳ですよ。

大昔のコンピュータもゲーム機も、全部おなじ仕組みなんです。

ところで、私たちが生まれて間もない頃は、
頭の中のトランジスタが、全部びっしりと電線でつながれているらしいですよ。

それはそれはものすごい回路。

でも、 なんでも出来るものは結局なんにもできない‥
ということわざどおり、全部が全部つながっていたら機能は生まれてきません。

みなさんが生きて少しずつ経験を積んでいくと、
よく使う回路だけが残って、 あんまり使わない回路は退化してなくなっちゃうそうです。

みなさんも、風邪ひいて2、3日寝込んじゃったりすると、足がふらふらになるでしょ。

あれといっしょ。

歩いてないと足の筋肉が細くなっちゃうんです。
使わない機能は退化するんですよ。

怖いですね。
なので、今私たちの脳の中には、いままで使ってきた回路だけが残っているわけです。

たくさん使ったところは強化されてますます強くなるので、やっぱりお勉強したほうがいいってことですね。

皆さん毎日プログラムの更新をしていますか?

更新をさぼると、そのうちソフトを入れても動かなくなっちゃいますよ。

宿題のインストールも大事です。 (-1- はじまり を見てね)

さて面白い実験結果をお見せしますよ。

これは粘菌といって、動物でも植物でもない生き物です。

アメーバのような細胞がたくさんつながりあって、 合体した巨大なアメーバみたいに振舞います。

この粘菌を、入り口と出口にエサを置いた迷路に繁殖させるとあら不思議!

見事に迷路を通過して入り口と出口を結んでしまうというわけです。

こんな感じ。



a:最初に粘菌は迷路全体に繁殖

b:栄養が流れない迷路の行き止まり部分の粘菌が消えていく

c:最短距離(栄養がよく流れる)のコースが強化されて残る

d:最も効率のいいコースが残る

(理化学研究所「Nature」9月28日号に掲載)

こんな仕組みですが、お見事!

まるで知能があるかのように迷路を最適コースで結んでいますね〜

粘菌はもう一つ面白いお話があるので、ちょっと休憩してからまたはじめましょうね。

上へ


-8- 粘菌対人間


うわー。すごいですね。

神経も脳も無いアメーバがですよ。
迷路を最適なコースで結んじゃうんですから驚きますよ。
これは知能と言ってもいいのでしょうか???

もし粘菌が、自分でじわじわ動きながら一番近い道を見つけていたとしたら、

それは本当に驚きですけどね。

人類も侵略されて粘菌の奴隷になりそうですが、

‥そうじゃないです。

まず全体に広がっておいて、その中で一番よく栄養が流れるところだけが残った。
ということですからね。

ルールは2つしかないです。

・ 栄養が流れないところは消える
・ 栄養がよく流れるところは強化される

‥たったこれだけ!
これだけの決まりごとで、迷路の出口と入り口が最適なコースでつながっちゃうんですね〜。


でもよく見ればこういうのほかにもありますよ。

例えば水の流れ。

流れがよどんでいるところは干上がってなくなるし、

よく流れているところは太くなってもっとよく流れるようになる。

川の流れも地形に沿って最適なコースを通ってます。

これと同じことが私たちの脳でも起こっているんですね。

使わない回路は退化して滅び、
よく使う回路が強化されて残っていく。

そうして、いつの間にか最適な回路ができている。
っというわけです。

では人間が作った最適回路と粘菌が作った最適回路を比べてみましょー。
どっちがいいものを作るでしょうか???

関東地方の形をした寒天の上の
主要な駅のところにエサを置いて粘菌を培養したら‥



(2010年1月22日04時50分 読売新聞)

常磐線も高崎線も中央線もありますよ。

(人間)人が集まるところ=(粘菌)エサが置いてあるところ

なんですね〜

なんだかそのまんまで笑えます。

粘菌の1匹いっぴきは全体の姿なんか想像もしていないですよ、
なんせ脳も神経もないんですからね。

隣り合った粘菌同士のやり取りだけでこんなことになるんですね。

本物の鉄道は何十年もかけて少しずつ出来上がりましたが、
粘菌は26時間でこんなのを作っちゃいました。

この粘菌の鉄道経路も、

・ 栄養が流れないところは消える
・ 栄養がよく流れるところは強化される

の2つのルールで作り出されたものですよ。

私たちの脳細胞一つ一つも、脳全体の姿なんて知らないのですが、こうやってすごい回路を自前で作っちゃうんですね。

知能は川の流れと同じしくみで出来上がっていたのです。

おどろき!